日本人と韓国人ぐらいなものだ。
いつまで経っても、Lと言えず、先生としか呼べなかったのは。
そして指されない限り、自分から話そうとはしない。
Lもそんな私たちに興味を示さなかった。
いつまで経っても、壁の花で自分でもつまらなくなり、やめようか、と思っていた矢先の出来事だった。
突然Lが1枚の絵を我に見せ、物語を作れと言った。
女の人が、キッチンの床にシャベルで穴を掘っている絵だった。
普段は積極的な生徒たちが誰も手を挙げない。
Lがめずらしく困っている様子だったので、私は咽嵯に手を挙げ「これは妻が夫を殺し、床に埋めている絵だ」と説いた。
教室内は盛り上がった。
「なぜだ?」というから、「亭主が何も家事を手伝わないので、ケンカになり殺してしまって、床に埋めているところだ」と加えた。
それからが大変、「お前の国は男が何もしないのか?」と言うから、「男は仕事だけだ」と答えると、Lは家事の役割を表にし、男女どちらがするか全員に手を挙げさせた。
私は日本人の家庭としては、かなり夫に家事を手伝わせているつもりだった。
夫は朝は必ずアタッシェケースとゴミ袋を抱えて出勤していたし、買い物についても家庭から逃げ出せるせいか、進んでやっていた。
しかしいつだったか、朝いつものようにゴミの大袋を抱え、エレベーターに乗り込み「行って来ます」と言うから、私も片手片足を振り「行っといで」と答えた。
扉が閉まり引っ込もうとすると、閉まったはずの扉が開閉ボタンを押しまちがえて開いてしまった。
これをきっかけに、壁の花から1挙に大輪の華へ昇格となり、楽しいアメリカ生活が続いていた。
そんな矢先、Lが突然学校を辞めると言い出した。
大きな顔に全身の憎しみを込め、無言で叫んでいるではないか。
つまり日本人の夫にとっては、ゴミ捨ても家族でする外食も家庭サービスの1環なのだ。
Lの質問の答えも予想通り、家事は女性がすると、手を挙げたのは日本人と韓国人だけだった。
違った国の文化・習慣を話すのはとても楽しかった。
悠長な英語力など必要はない。
辞書を引き引き見よう見まねで語れば、何とか伝わるものだ。
しかし、どうしても理解されなかったのが、冠婚葬祭にお金を包むという日本の習慣と、夫に靴下まではかせてやるという韓国の習慣だった。
どうしてもLと別れがたく、個人レッスンを頼みたいと哀願した。
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